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森枝卓士著『カレーライスと日本人』インド産なのに、レストランだと洋食扱い?いまや日本の国民食「カレー」の秘密に迫る。

今回紹介する文庫

  • 出版社:講談社
  • 発売日:2015/8/11

レビュー

カレーの不思議と歴史が詰まったエッセイ。

 

カレーの起源はインドにあることはよく知られていますが、私たちが食べているカレーとインドのカレーは全く別物のように思えます。私たちがカレーと言われて想像するのは、「カレールー」や「カレー粉」をベースに作られたとろみのあるソースですが、インドのカレーはスパイスを調合して作られるスープ状のものです。そもそも「カレー粉」や「カレールー」などというものは、インドのスーパーでは見つけることが困難だと言われています。

 

日本人にとってのカレーは、明治維新の頃に「洋食」として受け入れられたのが始まりです。そのため、直接の起源はイギリスにあると言ってもいいかもしれません。インドで生まれたものがイギリスに伝わり、それが日本へと伝わる。カレーライスの船旅は壮大です。

 

日本人にとってのカレーは今や国民食です。しかし、「和食」だとはあまり思えません。味噌汁や寿司、天ぷらは「和食」だと思う人が多いですが、これらも元はと言えば外から来たものです。日本に明治維新より前に来たか、後に来たかで判断されているのでしょうか。明確な「和食」の定義は曖昧であり、「和食」が体現する日本の食文化はほんの一部であるようにも思えます。

 

昔から何でもありな日本の食文化。ひとつの皿の上に「ご飯」という「和」と、「カレー」という「洋」が共存するカレーライスは、その特徴がよく現れた料理です。