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大津透著『律令国家と隋唐文明』「日本」や「天皇」の成立に寄与した、膨大な人々の努力。

今回紹介する新書

レビュー

バラバラだった日本を一つにまとめた立役者「律令制度」の秘密に迫る1冊。

 

古代日本は、中国に遜り、中国を丸パクリすることしか生きられない未開の後進国のような印象を受けます。しかし、隋唐の諸制度は日本の実情に沿う形で導入されたため、日本と中国の律令国家には大きな違いが見られます。大宝・養老律令の施行は天皇制の開始と結び付けられる場合も多いですが、実はこれらの律令には天皇制が規定されていません。この時代、天皇は宗教的・神話的存在であったため、天皇について律令で何かを規定することはタブー視されていたのかもしれません。また、唐に倣ったとされる官僚制も、事実上の貴族による世襲制と化していました。律令国家と言っても、日本の古い習俗をそう簡単に拭い去ることは難しかったのでしょう。

 

律令国家の進展は、鑑真と吉備真備、そして大勢の遣唐使の活躍抜きには語れません。戒律をもたらした鑑真、礼をもたらした吉備真備は、命懸けで何度も海を渡り、日本の国づくりに寄与しました。遣唐使によって都城制の最新知識がもたらされた結果、わずか十数年で藤原京を捨てて平城京の造営を開始したという話も興味深いものがあります。奈良~平安初期に行われた、唐をモデルとした社会の構築は、「日本」という国号や漢字二字の「○○天皇」という諡号など、現代社会にまで影響を与えています。

 

百済の亡命貴族を受け入れて開始した律令国家の形成は、"お雇い外国人"を受けいれて成功した明治維新とも重なります。多くの外国人の力によって醸成された日本国と日本人。その子孫として今を生きる私たちは、果たして外国人を社会の一員として寛容に受け入れているでしょうか。