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高階秀爾著『バロックの光と闇』ルネサンスに続く西洋文化。時代とともに変化する美意識。

今回紹介する文庫

  • 出版社:講談社
  • 発売日:2017/11/11

レビュー

美術史における「バロック」の姿を解説する1冊。

 

今日でこそ荘厳で華麗なイメージがある「バロック」美術。しかし、「バロック」は元々「歪んだ真珠」を意味する単語であり、時代から逸脱した絵画を揶揄するための言葉でした。しかし、ド派手なだけでなく、寓意性や写実性を持ち合わせた絵画は、やがて国王に庇護を受けることで、発展を遂げることとなります。

 

バロックも、前の時代のルネサンスも、その隆盛は当時の欧州情勢とは切り離すことができません。そのため、本書は美術史の概説書でありながら政治史も綴られている、とても重厚感のある1冊でした。

 

古典主義、バロックロココ、ロマン派など、美術史にはさまざまな区分が設けられていますが、それらを時代区分のように直線的な変遷と捉えるべきではありません。単なる表現様式の1つに過ぎない「バロック」は、時代を越えて様々な美術作品に見出すことが可能です。また、絵画や彫刻に限らずや文学や音楽にだって、「バロック」の精神を宿らせることは可能なのです。

 

白黒ですが図版も大量に掲載されており、西洋美術にあまり明るくない方でも楽しく読める入門書になっています。