基本、新書。

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田中ゆかり著『方言萌え!?──ヴァーチャル方言を読み解く』方言は、地域の”らしさ”を語り継ぐ。

今回紹介する新書

レビュー

「ヴァーチャル方言」を、中高生向けに平易に解説した一冊。「ヴァーチャル方言」とは、実際に話されている方言ではなく、主にキャラクターなどのイメージ形成のために用いられる、ステレオタイプ的な方言です。西郷隆盛の「九州弁」、坂本龍馬の「土佐弁」、服部平次の「関西弁」などがあたります。

 

戦前戦後は「下品ナル言語及方言・訛語ハ之ヲ避クベシ」など、恥ずべきものとして捉えられてきた方言ですが、高度経済成長期から徐々に市民権を得てきました。その要因には、メディアの普及によって全国に広まった「ヴァーチャル方言」が深く関係しています。最近では、実際に用いられる”リアル”方言にも影響を及ぼすようになりました。


これほど標準語が浸透しているにもかかわらず、地域方言が失われずに残ってきた国は、世界でも珍しいそうです。近年では若者が方言を話さなくなった地域も少なくないようですが、これからも地元のことばは大事にしていきたいものですね。