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毛内拡著『脳を司る「脳」──最新研究で見えてきた、驚くべき脳のはたらき』ヒトの「こころ」に、脳の「なにもないところ」が関与!?

今回紹介する新書

  • 出版社:講談社
  • 発売日:2020/12/17

レビュー

本著は、従来「脳」と考えられていた部分(ニューロンネットワーク)ではなく、脳細胞と脳細胞の隙間(間質)に着目した研究が多数紹介されています。タイトルの『脳を司る「脳」』とは、「脳のはたらきそのもの」だと思っていたニューロンのはたらきを司る、「別の脳のはたらき」の存在を意味しています。

 

ヒトが「生きている」とは、どのような状態のことを指すのでしょうか。心臓が動いている状態でしょうか。呼吸をしている状態でしょうか。それとも脳が動いている状態でしょうか。確かにそれらも1つの「生」の定義として使えるかもしれません。しかし筆者は、「こころのはたらき」が人間の「生」にとって欠かせないものだと考えています。美しい景色を見て感動する、相手の言葉に怒りを覚える、死に直面して悲しみを覚える…こうした瞬間にこそ、私たちは「生きている」と実感するのではないでしょうか。

 

前述の通り、これまで脳はニューロンの神経伝達によってのみ機能していると考えられてきました。しかし、どうやらそれだけでは、ヒトの行動・情動がなぜ起こるのかを完全に説明することはできないようです。そこで最近注目されているのが、これまで何のはたらきも持たないと考えられてきた間質です。研究が進むにつれ、最近では肝臓や腎臓と同様に「器官」の1つとしても認識されつつあるようです。

 

隙間だと思っていた部分から明らかになる驚くべき脳のはたらき。2020年代になっても、脳にはまだまだ分からないことが山積しています。