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高田貫太著『海の向こうから見た倭国』朝鮮半島の考古学が描き出す、倭国のもう一つの姿。

今回紹介する新書

レビュー

朝鮮半島の情勢を読み解くことで、日本古代史を多角的に俯瞰する1冊。

 

よく高校までの日本史においては、「朝鮮半島から渡来人がやってきて中国の進んだ文化を取り入れた」などと簡単に語られることの多い古代外交。しかし、果たして航海のリスクが非常に高かったこの時代に、本当に先進文化を伝えたいという善意だけで人々は海を渡ってきたものなのでしょうか?まるで倭だけが一方的に恩恵を受けたような印象を受けますが、朝鮮半島側も倭と結ぶメリットがなければ、このような交流は成立しなかったと思われます。

 

日本列島において倭王権の中心は(基本的に)1つですが、朝鮮半島には高句麗百済新羅加耶諸国など、様々な勢力が鎬を削っていました。その中で、「倭と関係を結んでいる」という事実は、自らの力を周辺社会に誇示するために重要だったのです。

 

もちろん倭王権の勢力も圧倒的だったわけではありません。高校日本史では、百済との良好な関係を続けていた倭王権に対し、「磐井」が新羅と結んで反乱を起こしたことが語られます。しかしこの反乱は、そもそも新羅側が倭王権の中で「磐井」が敵対勢力であることを見抜いていなければ起こりえません。遠い島国の政治情勢を、ここまで正確に把握しているのは驚くべき事実ですが、それだけ活発な交流が両地域で行われていたことを物語っています。

 

国内で見つかる甲冑などの半島産の供物。逆に朝鮮半島で見つかる前方後円墳や須恵器。発掘調査の進展で明らかになるのは、1500年前にも活発に海を渡っていた、多くの倭人朝鮮人の姿です。